高知医療センターの医師の一カ月の残業が二百時間という激務を、監視役の高知労働局(高知市南金田)はどう見ているのか。私の問いに幹部は言葉を選びながら答えた。 「もちろん問題がある可能性はあります。八時間を二十五日働くと二百時間でしょ。一カ月で二カ月分勤務しているようなものですから」 時間外労働は労使の合意、いわゆる三六(さぶろく)協定を...
高知医療センター脳外科の森本雅徳部長(56)、福井直樹医師(40)の脳卒中治療に懸ける熱い思いを聞きながら、私は複雑な気持ちになった。というのは、世間はその熱意を、それほどしっかり受け止めてくれているとは限らないからだ。 この取材中、がっかりしたことがあった。脳外科の不眠不休の奮闘を知人に話したところ、「そんな寝ていない先生に手術してほ...
溝渕雅之医師(48)の新しい勤め先、岡山旭東病院(岡山市倉田)の現実に驚いていたら、院長、土井章弘医師(68)の実践もまた驚きだった。 最初のサプライズは、廊下の至る所に飾ってある絵画。「この絵はね、まず職員に喜んでもらいたいんです」 患者のためではないのかと聞くと、「それだと、職員はどうでもいいのか、となるでしょう。間違っているのでは...
ハイリスクで仕事のきつい診療科と、そうでない科では報酬格差を付けるべきだ―という話はあちこちで聞いた。公立病院勤務医の気持ちも長続きしないし、医師の卵も敬遠する。だが、実行するとなると、かなり難しいとも聞いていた。 「うちはもうやってますよ」。山形大医学部長の嘉山孝正・脳外科教授(58)はさらりと言った。 「医療危険手当ね。脳外科だけじ...
六月、岡山市郊外にある岡山旭東(きょくとう)病院を訪ねた。高知医療センターを辞めた溝渕雅之医師(48)に会うためだ。彼の言う「メリハリのある生活」の現実を確かめたかった。 どんな病院なのか。調べると実力派だった。 脳疾患と整形外科に特化。百六十二床で職員は三百五十人。通常なら三百床規模の手厚いスタッフ数だ。医師は三十人おり、脳外科医は八...
「室戸にヘリポートができたでしょ」と脳神経外科の溝渕雅之医師(48)。県立安芸病院から脳外科が消える直前、平成十八年二月のことだ。 「あのころから東部の急患が、どんどん来始めたんです。どこから来てるか聞いたら、救急車は安芸方面から。ヘリも、それまであまり来なかった室戸からの要請で、突然のように舞い降りてね。午前中だけで二回、室戸へ飛んだ...